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2月 20, 2025

空間のことば

空間のことば | コロラド川

かくれた次元(著エドワード・ホール)によれば、言語と文化について研究した人類学者フランツ・ボアズは二つの言語の語彙を分析し、異なった文化を持つ民族の環境認識の違いを明らかにしている。米国人にとっての「雪」は二つの表現があるが、エスキモー語には状況や状態をあらわす「雪」が多くあるそうだ。日本語には漢字があり、同じものでも異なる字を使う場合がある。例えば、私たちは「森」と「杜」を状況に応じて使い分けるが、英語では「Forest」である。先のエスキモーの言葉と同じように、日本の文化に根ざした言葉であり、「杜」が日本人にとって特別な空間であることを表している。前述の著書では、民族による「語彙」の違いをそれぞれの民族がもつ「知覚」の違いに議論を発展させている。人はイメージ/視覚だけでなく、言葉によって空間を想像することができる。そして、言葉によって認識された空間は個々人によって少しずつずれている。揺らぎの中にある重なりと差異を探りながら空間を考えることができれば、より魅力的な建築がみえてくるかもしれない。

written by kentaro nagasawa