友人の建築家が徳島で石端建て、伝統構法の家を建設している。滋賀の宮内棟梁のもと、地元徳島、三重、岡山、香川から腕利きの大工が集結した。若手中心、女性3名、アメリカ人1名を含んだ混合チーム、棟梁は特に指示を出さないが、各々が淡々と手際よく作業を進める。現場で大工の技量で重要なのは木を読む力であると林業家の和田さんに教えていただいた。土台、柱、梁、桁の一本一本は、事前に吟味され、どの材をどこに、またどの方向に据えるか決められる。意匠的には室内になるべく節のない面を用い、構造的には柱の乾燥による変形を考慮(開口部側に凸にならないように)して、開口部側には木表(丸太の外皮側の白く若い年輪層)を据え、建物周辺部には湿気を弾くよう木裏(丸太の心材側の赤く古い年輪層)を向ける。その材料が山のどの斜面に生育していたかも重要な情報で、特に樹木の根元部分は谷側に圧縮に強い性質を持つ。この特性は広葉樹、針葉樹で異なるらしい。木の特性を読み解き、文字通り適材適所を決めて建前に臨む。細やかな心遣いの末に組み上がった木組みに棟木が据えられ、大工の掛け声とともに木槌で叩く音が山里に木霊した。山から木を切り出し、加工して、組み上げる。山は再生される。この一連の仕組みから生み出された家はとても生き生きしてみる。住み手もつくり手もみんなが笑顔で、楽しく家をつくっている。