「とかく味気なく冷たい黙して、堅い表現を与えがちな今日の建築に、もし一片の詩情の投入が許されるならば、内なる生命が静かに建築の内奥に芽生え、さらに息吹ともなって私どもに語りかけ、対話の感動となるのではなかろうか」(今井兼次建築創作論建築家寄稿より)
埼玉県川島町の田園風景の中にぽつんと佇む建築家今井兼次の遺作である。日興証券創業者の遠山元一氏の中近東と日本のコレクションを展示する室が二つ設えてある。教会のような凛とした空気が流れる室内に見られるフレスコ画の色彩やステンドグラスを通して滲み出る柔らかな光が心地よく、造形は異なるが、シアトルで訪れたスティーブン・ホール設計の礼拝堂を思い出した。御母堂をテーマに設計を進められた今井先生の想いが伝わってくるような強く優しい空間である。