土木工学科の3年生の時に、同学科一期生の先輩である畠山義人さん(当時清水建設景観グループ所属)によるランドスケープデザインに関する特別講義があった。「景観」という言葉に魅了され、毎週ドキドキしながら授業を受けたことを覚えている。ランドスケープデザインという言葉はその授業で初めて耳にしたし、まして、海外にランドスケープアーキテクトというデザイナーが存在することなど全く知らなかった。土木構造物は元来「人」のスケールではなく、「物流」や「危機管理」など「国家」「国土」という大きなスケールで計画されるものであるが、畠山先生は土木構造物にも景観としての美しさや人との関係性を考慮した設計が必要であると教えてくれた。景観学者の樋口忠彦氏は「美しい景観とは、場所の特性と人間生活とがしっくり調和した心地よい景観のことである」と述べている。日常的に営まれるそこに住む人々の活動とそれによって形つくられる地形や街並みが、景観となり、長い時間をかけて文化として土地に根付くのだろう。スケールは違うけれど建築もまたそうだと思う。新しくつくられた家はそこに住む人によって、より心地よく、使いやすく少しずつ「棲家」になっていく。きっとそこにも「人」が介在した美しい景観ができるはずである。そのスタート地点を上手にデザインできる作り手になれればとても嬉しい。