Sci-Arcの授業はどれも刺激的なものばかりだった。その中でもProf. Coy Howardのvisual studiesはとても印象に残っている。自分の五感を駆使してデザインについて考える授業。課題は週替わりで与えられた。次週までに骨董品屋で好みの絵画を買ってきて、それに見合う額を作る課題、自分の手とお気に入りの音楽で制作するショートムービー、身近な人の言葉とポートレート、家具の解体と再構築など。教室には学生達がスタジオの合間をぬって徹夜で制作した作品が並ぶ。Coyは一つずつゆっくり見てまわり、気になった作品の前で立ち止まって、なぜそれがよいのか学生達に尋ねる。様々な意見がでるが、答えは示されない。禅問答のようだが、その中に確かにいいなあという感覚はある。シンプルなものの中にも美しさはあるけれど、Coyが取り上げる作品はいつもその逆だったように思う。複雑で、込み入っていて、それでいて調和が取れているもの。人を魅了する建築や音楽、食などにも共通して備わっている要素のように思う。