海と大地の小さなステージ
女川町のみなさんが愛する海が、利用者のアクティビティの一部になるような建築を考えたいと思いました。
そして、できれば、その建築は町の人達の手で作られたものであるように。
土は遮音性、吸放湿性に優れているため、快適な室内環境を維持します。蓄熱性にも優れているため薪ストーブの炉壁としても適しています。中間期の利用を主としていますが、少し寒くなってきた季節でも、家族やご友人と暖炉を囲みながら音楽や談笑を楽しむことができます。日差しの暖かい日には縁側に座って友人とコーヒーを飲んだり、芝生で体を動かすのも良いですね。海風に当たりながら、日常を過ごせる場所としても利用できます。
家族や友人、時には町のみんなで集まって、音楽を聞いたり、ダンスをしたりできる広場を緩斜面の一部を薄くすいて作ります。建築が大地に抱かれるような緩いカーブが建物前面にオープンスペースをつくります。小さな野外コンサートをすることもできます。取りのぞかれた土砂は版築壁の材料になります。
土は古代から世界中で利用されてきた建築材料です。時間はかかりますが、突き固めの工程は大人でも子供でも参加することが可能です。土が建築になり、そしていつかは自然に還っていく。自然への畏敬の念を込めた建築でもあります。
海岸広場から見える海や山並みに呼応するように、平面計画は円弧状の形をしています。縁側のすのこ、外壁、梁、桁、内装材には宮城県産の杉を活用します。食資源を中心に地産地消を推進する女川を象徴する建築として、地元の材料にこだわります。敷地の土と地元の木材を使った、女川町の皆さんの手で作りあげられる場所。
長く愛されている女川の海のような建築に。