人と建築の間にはいつも物語が横たわっています。
人々の感性に触れることで、体験の一部になるような、そんな空間をつくりたい。
こんな思いで日々建築と向き合っています。
■Statement
3つの対話から建築を考えます。
1. 依頼者との対話
住宅では、住まい手の価値観やライフスタイルは設計において重要な要素です。創作の手がかりは、具体的な空間イメージよりも、むしろ生活の中で好きな時間や習慣、記憶に残る風景など抽象的な要素にあります。店舗や飲食店では、提供される商品やサービスに加え、オーナーが届けたい体験や世界観についても理解を深めることを大切にします。たとえ断片的であっても、対話を重ねることで、真に求められている要素が見えてきます。
2. 環境との対話
街並みや敷地の植生、水、土壌、微地形、気候──そうした風土が培った地域文化も建築を考える上で大切な要素です。これらは長い時間をかけて育まれたものであり、人の価値観やライフスタイルと同じように、揺るぎない要素として建築の基盤になります。一方で、季節や時間など比較的短い時間で変化する要素も考慮する必要があります。陽光、風、湿度、音、温熱、シークエンス、素材の経年変化などです。また、建築基準法や関係法規との調整も必要です。環境との対話から、建築の外と内の要素とその関係性について考えます。
3. 経験や記憶との対話
設計者である私たちが過去に体験してきた経験や記憶も設計に影響を与えます。これまで国内外の多くの建築を訪れ、その空間を体験してきました。繰り返し訪れる建築もあります。空間だけではなく、そこを訪れている人々の振る舞いや空間に差し込む光、風の流れ、庭の緑や周囲の自然など、すべてが体験として残ります。五感を通して得た体感の記憶を拠り所に、新たな建築について考えます。